2019(令和元)年度 活動の紹介
1.概況(診療体制)
●薬剤部スタッフ
薬剤部は、薬剤部長1名、副薬剤部長1名、調剤主任1名、製剤主任1名、薬務主任1名、医薬品情報主任1名、治験主任2名、薬剤師16名、非常勤薬剤助手2名の総勢26名でスタートしたが、結婚退職等で23名となった。
●基本方針
(1)薬物治療への貢献
・薬剤管理指導件数の増加と質の向上(特に安全管理が必要な医薬品に対する服薬指導の実施率の向上)
・病棟薬剤業務の充実
(2)医療安全への取り組み
・各種手順書の遵守と継続的な見直しを行い、調剤過誤等の防止・縮減に努める。
・病棟薬剤業務の拡充などにより、院内における薬剤関連インシデント縮減を図る。
(3)臨床研究への関与
・受託研究(治験・製造販売後調査)を支援する。
・薬剤部員による臨床研究活動の活性化を図る。
(4)後発医薬品の採用促進
・後発医薬品の使用数量シェアで85%以上を維持する。
(5)チーム医療への参画
・薬剤の専門職として積極的にチーム医療に関わる。
(6)薬薬連携の推進
・高崎市薬剤師会との連携を推進し、患者の薬物治療への薬剤師のかかわりを一貫させる。
2.活動報告(診療実績)
(1)調剤業務
本年度は、入院処方箋87,158枚、対前年度103.9%、外来院内処方箋が11,034枚、対前年度104.3%といずれも前年度を上回る実績であった。逆に院外処方箋発行率は87%と前年度を1.1%下回った。
医薬品購入費の抑制、病棟薬剤業務の充実や薬剤管理指導を増やすためにも院外処方箋の発行を推進していく必要がある。
また、窓口業務として入院予定患者の服用薬の確認を行っている。主に手術や検査などで入院を予定している患者に対してであるが、服用内容の確認と共に副作用歴やアレルギー歴についても聴取している。来年度は患者サポートセンターが新設されることから、服薬薬の確認を含め他部署と連携をとりながら入退院時のサポートも強化していく。
(2) 注射薬業務
本年度は入院注射箋209,350枚、対前年度102.6%、外来注射箋21,451枚、対前年度106.3%であった。外来化学療法の増加に伴い、外来注射箋数の増加し、抗がん剤の購入数量・金額も大幅に増加した。高額な医薬品を多数扱うことから在庫管理には細心の注意を払っている。
(3) 病棟業務関連
薬剤管理指導件数は12,684件算定し、月平均1,057件だった。病棟薬剤業務実施加算1は26,981件、病棟薬剤業務実施加算2は7,951件だった。2020年3月に新棟が完成し、病床数が451床から485床に増床し病棟数も増えたため、業務の効率化を図りつつ、これまで以上に件数を伸ばしていきたいと考えている。
チーム医療では感染制御チーム(ICT)・抗菌薬適正使用支援チーム(AST)に専従で薬剤師を配置し、栄養サポートチーム(NST)、緩和ケアチーム、認知症ケアサポートチーム(DCT)、糖尿病療養指導プロジェクトチーム、褥瘡チーム、摂食嚥下回診チーム、PEGチーム、術後疼痛管理チーム(APS)など、多くの医療チームに専任で薬剤師を配置し、薬剤師としての専門性を医療チーム内外で発揮している。他にも早期栄養介入管理加算が新設されるため、ICUにおいてNSTチームカンファレンスに毎日参画し始めた。
(4) がん化学療法関連業務
2019年度の抗がん剤調製件数は6900件(575件/月)、がん患者指導管理料ハ請求件数502件(42件/月)であった。抗がん剤を適正に使用するために抗がん剤、補液、併用薬剤、投与順序、インターバルなどを記載したレジメンの管理・登録を行い、抗がん剤調製前には、レジメンの内容や薬剤ごとの用法・用量、患者の状態や治療歴の面からも処方内容を確認することで重篤な有害事象を回避するよう複数の薬剤師による確認を行っている。がん薬物療法に精通したがん薬物療法認定薬剤師2名ががん患者に説明や指導、副作用のフォローを行っている。今後の課題として、がん化学療法に精通した資格を持つ薬剤師の育成・教育がある。
(5) 医薬品情報管理業務
安全かつ最適な薬物治療のために必要な医薬品情報の収集、評価、整理し各部署へ情報提供を行っている。医薬品情報誌「薬匙」は月1回定期発行をしており、院内のみならず、地元薬剤師会にも配布している。その主な掲載内容は、医薬品情報、薬事委員会報告(薬事委員会は年4回)、不良在庫の使用促進のため期限切れ間近の薬剤の在庫量、薬剤部の各種業務報告である。
また、医薬品の市販後安全対策に資するため、院内での副作用情報の収集にも取り組んでおり、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度に従い規制当局に積極的に報告するよう努めている。
医薬品情報は膨大であり、各部署からの質疑に対応するため病棟担当薬剤師と連携して、医薬品情報管理業務に取り組んでいる。
(6) 医薬品管理業務
医薬薬品購入費が昨年度比123%、金額にして約430,000千円と大きく増加している。増加の理由として、高額な抗がん剤の適応追加による使用量が大幅に増えたことが一番の要因となっている。病院経営の観点から、医薬品購入比率を抑えることは重要であり、適正な医薬品の入出庫等の管理、後発医薬品の採用促進等に取り組んでいる。
今年度は、薬事委員会において、新規採用品目数37品目、採用中止品目数31品目、後発医薬品への切り替え15品目を行った。その結果、採用品目数は1377品目である。後発医薬品品目割合85.2%、金額割合35.8%、数量割合94.7%となった。
(7) 病院実務実習
11週間の病院実務実習として、複数の大学から薬学生を毎年受け入れ、薬学学生の臨床教育に貢献している。
2019年度の受け入れは3期にわたって高崎健康福祉大学4名、明治薬科大学1名、武蔵野大学2名及び昭和薬科大学1名の5つの大学から合計8名であった。
(8) 専門・認定薬剤師資格取得状況
令和元年度末での専門・認定薬剤師取得状況は、以下のとおりである。
・日本病院薬薬剤師会がん薬物療法認定薬剤師:2名 ・日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師:1名
・日本臨床栄養代謝学会NST専門療法士:3名 ・日本臨床腫瘍薬学会外来がん治療認定薬剤師:1名
・日本糖尿病療養指導士:1名 ・日本薬剤師研修センター認定実務実習指導薬剤師:3名
・公認スポーツファーマシスト:1名
3.今後の展望
薬物療法の一翼を担う薬剤師として、質の高い薬物療法への貢献、医療安全の推進及び、健全な病院経営への貢献を大きな柱として今後も取り組んでいくこととしている。 これらを実現するためには個人のスキルアップも必須であることから、臨床研究や認定取得等と推進することとしている。質の高い薬物療法を実現するためには、在宅での管理も必要となることから、地域の保健薬局との連携強化にも取り組んでいく予定である